アーカイブ: 2010年6月09日

Date: 2010.06.09 | 投稿者: nakamoto

茨城空港からプライベート旅行で韓国へ行ってきた筆者が、今回は交通ブログの「国外版」として、ソウルの公共交通についてレポートします。

ソウル市内にある朝鮮王朝の霊廟「宋廟」

韓国(大韓民国)の首都ソウルは、人口1千万人を超える近代的な大都市です。

アシアナ航空の定期路線で茨城空港と結ばれている「仁川(インチョン)国際空港」から、高速道路を利用して約1時間から1時間半で、ソウル市内に到着します。

ソウル市内は、地下鉄、バス、タクシーなどの公共交通が充実していると聞いていましたが、ちょうど土曜日だったこともあり、市街地は自動車であふれ、大渋滞が起きていました。

4車線以上ある道路は自動車であふれ・・・・

本当にソウル市民は公共交通を利用しているのか、と疑問に思いながら通りをながめれば、これまた、たくさんのバスが連なって走っているのが目につきました。

聞けば、バスは、その種類によって色分けされており、少し長い距離を走る「幹線バス」は青色、幹線バスのバス停や地下鉄駅を結ぶ「支線バス」は緑色、都心を走る「循環バス」は黄色、ソウルと周辺都市を急行で結ぶ「広域バス」は赤色、というように、一目で種類がわかるようになっている、とのことでした。

幹線を走るブルーバス

支線的なグリーンバス

都心を走るイエローバス

韓国を案内してくれた現地のガイドさんによれば、市内の移動にはバスが大変便利で、ガイドさん自身も日常的によく使っているそうです。

しかし、バスが現在のような便利な乗り物となったのは、現在の韓国の大統領であるイ・ミョンバク氏がソウル市長時代に行った「バス改革」以降の、ここ数年の事だそうです。

この、ソウル市のバス改革って、どんなものなのでしょう。

ガイドさんの話や、ネット、ガイドブックなどで調べた情報にもとづいて解説しますと・・・・。

<清渓川復元とバス改革>

ソウル市内を流れる清渓川(チョンゲチョン)は、水質悪化に伴い、1970年代に暗渠(あんきょ:川にふたをしてふさぐこと)化されていましたが、2000年代に入って、清渓川の復元を望む市民の声が高まり、川の上を走っていた高架道路を撤去して、川を復元しました。2005年のことです。

しかし、それまで1日16万台もの通行量があった高架道路が無くなることで、締め出されたマイカーによる渋滞が予想されたことから、ソウル市ではマイカーから公共交通への転換を図るため、2004年に大規模なバス改革を行いました。

今では市民の憩いの場となっている清渓川

改革前は、乗客の多い場所に複数のバス会社の路線が集中する一方、乗客の少ない地域はバス運行本数が少なく、料金も値上げが相次ぐなど、利用しづらいものでした。

バス業界も、事業者数が約100社もあり、合併や倒産が相次ぐなど、経営的にも厳しい状況にありました。

そこで、行政、市民代表、バス事業者、有識者による「バス改革市民委員会」が中心となって、2003年から2004年にかけて、徹底的な改革案の検討が行われたそうです。

<バス改革の内容>

まず、バス路線を、先ほども書いたとおり、「幹線(青)」「支線(緑)」といった機能によって色分けし、さらに市内を8つのゾーンに分けて、系統を整理しました。系統番号は、8つのゾーン番号で整理されているため、バスの色だけでなく番号表示を見れば、行き先までわかる仕組みとしました。

8つのゾーンに系統が分けられている

また、ソウル市内は料金を均一とし、30分以内に乗り継いだ場合は、乗り継ぎ後のバス運賃を無料としました。地下鉄からの乗り継ぎも無料となっています。「Tmoneyカード」というICカードの導入によって、乗り継ぎもスムーズなうえ、バスに関する様々な情報を集中管理できるようになりました。

さらに、バス停などの施設を改良して、快適性、利便性も向上させました。

デザインのきれいなバス停の路線表示

清潔感のあるバス待合所

こういうベンチ、日本にもあるといいですね

これらの改革のベースとなったのは、バスの準公営化です。運賃収入はいったん市で集めて、運行距離に応じてバス会社に配分することとしたため、路線重複による乗客の取り合いなどの無駄もなくなり、需要に応じた路線配置が可能となりました。こうした改革の結果、バス利用者は17%も増加したそうです。

ソウルのバス改革は、その徹底した改革内容の点においても、過去の行政主導改革の失敗経験をふまえ、市民、事業者などの利害関係者が徹底した議論の末にまとめた、という点においても、大いに参考とすべきものだと感じました。

今回は、観光ツアーでの訪韓であったため、残念ながらバスに乗車する機会がありませんでしたが、次回、韓国へ行った時には、是非、色々な路線バスに乗ってみたいと思いました。